海の中で感じること – 月に行く気持ちと似ているのかもしれない
私はダイビングを始めて37年。
世界中の海に潜り続け、気づけば16,000本近くも潜ってきました。
今では、海に入ることは特別なことではなくなりました。
まるで陸を歩くように、自然に水中へと身をゆだねることができます。
緊張なんて、もうありません。
水中を進むとき、もちろんコンパスを使うこともあります。
でも、ほとんどの場合、私は自然のサインを頼りに進んでいきます。
太陽の角度、潮の流れ、海底にできる砂紋、遠くの光の揺らめき…。
こうした自然のサインを感じながら泳ぐ「ナチュラルナビゲーション」は、私のダイビングの大きな楽しみの一つです。
そして、たとえ海外で初めて潜るポイントでも、決して迷うことはありません。
どれだけ潮が流れていようが、波があろうが関係ありません。
自然と対話しながら、必ず元の場所に戻ることができるのです。
でも、最近ふと考えることがあります。
「初めて海に入る人は、どんな気持ちなんだろう?」
私が初めて潜ったときの記憶は、もう遠い昔。
それでも、想像してみるのです。
もし、私がこれから月に行くロケットに乗るとしたら?
きっと、不安で胸がいっぱいになるでしょう。
ロケットに乗り込む瞬間、宇宙服を着てハッチが閉まる音を聞くとき、
「戻ってこられるのだろうか」と何度も考えるかもしれません。
初めて海に入る人も、きっと同じような気持ちなのだと思います。
見たことのない景色、体験したことのない世界、そして水中での静寂。
それは、まさに未知の世界への第一歩。
でも、その一歩を踏み出した瞬間、すべてが変わります。
波の音が遠のき、光が揺れ、カラフルな魚たちが目の前を通り過ぎる。
体はふわりと浮き、重力から解き放たれたような感覚に包まれる。
そのとき、きっとこう思うはずです。
「ここは宇宙よりも美しい場所かもしれない